東京モラルハザード

お腹がゆるいので、うんこを漏らさないことを目標に生きています。音楽を中心にカルチャー寄りの話題を書きます。

MORALITY IS DEAD

【ATARI TEENAGE RIOT 来日記念】政治音楽アーティスト特集

http://www.beatink.com/Labels/DHR/ATR/img/artist_img2_L.jpg
なぜ日本では、政治を社会問題を露骨に歌う音楽人がなかなか現れないのだろうか。有名になるのは、どれも恋愛や内情を歌った曲ばかり。演歌が格差社会を嘆いたっていいじゃないか。AKBが人種差別撤廃に乗り出したっていいじゃないか。国会議事堂なんてただのハリボテだって叫んでもいいじゃないか。遠くロシアやアフリカの紛争に想いを馳せてもいいし、その問題の根源をえぐるような曲を歌ったっていい。
音楽と政治は、大変相性がいい。デモ隊の中に太鼓叩きが必ずいるように、反復する掛け声とそれを統制する打楽器のリズムは集団をひとつにし、高揚感を圧倒的に高める。それは社会問題を背景にしなくても、ぼくらが集う音楽のライブで十分に実感しているはずだ。いま同じ極東の台湾では学生たちが大きくデモを展開している。日本人はこれほどに窮屈な思いをしても、いつまでも満員電車に乗ることをやめない。じっと耐えるのがぼくらの特徴らしい。でも、行動したっていいじゃない。
そんなことを思わせてくれる結構直接的な政治的音楽を紹介していく。


ATARI TEENAGE RIOT


ドイツ出身の3人組(元は4人組)アタリ・ティーンエイジ・ライオット。デジタル・ハードコアというジャンルに属するらしい。ホワイトノイズを多分に絡めたZOMBIE NATION的なドイツらしいテクノをひたすらに重くして、「暴動」「自由」「戦争」「革命」という言葉をシャウトし続けるアジテーショナルな音楽。革命と行動、政府は庶民を搾取しているなど、とにかく煽る極左バンド。政治的な主張は、リーダーのアレック・エンパイアを中心に展開されているが、どちらかというと1つの問題に焦点を当てるというよりも、衆愚政治に対する反発や連帯による権力との闘争を促すような音楽が多い。不満があるなら、行動しろと大変過激に語る。メンバーも白人と黒人と日本とドイツのハーフの女性と、その多様性への寛容を示すようなメンバー構成。
大学時代、フジロックで初めて観たが、その曲が踊れること踊れること、会場のそこら中で小さなモッシュピットが出来て、みんな汗だくになりながら、煽られまくった。そんな思い出のあるバンド。
最近復活してからの曲は、ニック・エンドウが出掛けており、ノイズの少ないキレイな曲が多い。個人的には前体制の曲がおすすめ。

Atari Teenage Riot 1992-2000

Atari Teenage Riot 1992-2000




SYSTEM OF A DOWN


言わずと知れた、現代ハードロック、メタルを代表するシステム・オブ・ア・ダウン。日本で爆発的に売れているマキシマム・ザ・ホルモンの亮くんがもっとも尊敬するバンドらしい。ここに紹介した曲は、後期のものだが、個人的にはメジャー1枚や2枚目の曲が特に好き。在米アルメニア人ということもあり、彼らの問題意識の根本は故郷アルメニアに置かれる。アルメニア人虐殺問題をはじめてとする国際的な隠蔽の歴史に真っ向から対立するスタンスが素晴らしい。なにより、ATR以上に音楽だけで、十分にかっこよく聴こえ、歌詞の意味は知らずとも音楽性だけで魅了してしまうところがたまらない。全盛期後半の歌詞は、ボーカルのサージ・タンキアンではなく、ギターが作詞を行いはじめるため大変直接的な表現になるが、活動期前半のサージの歌詞は詩的で読み込むものに解読の余地を与えるポエトリーとして完成している。
日本のサイトでは、弱い文明の考察が大変おもしろいので、是非読んでもらいたい。というか、このサイトがウツノミヤと政治的音楽を結びつける原点になった。SOADだけでなく、TOOLやRadioheadNine Inch Nailsの解説もあるので、読んでもらいたい。音楽への政治的造詣がぐっと広がると思う。
SOADの影響で、ウツノミヤの卒論テーマは、アルメニア人虐殺問題になったし、ウツノミヤに影響をたくさん与えたバンドである。

System of a Down

System of a Down



Rage Against the Machine


一度は、解散し、活動をやめたレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン。SOAD、ATR同様、ここ最近活動を再開した。大変嬉しく思う。ここに上げているアーティストはともに、一度は活動を休止しているものの、ここ最近再び活動を開始している。それが9.11以降続く世界の動乱とリンクするかどうかは、定かでない。しかし、政治的なメッセージを人々に届ける音楽は常に世界で発信し続けられる必要があると思う。日本みたいに、好きとか嫌いとか会いたいとか、あとは内省ばかりを歌う曲ばかりでは、音楽の本当の力は引き出せない。彼らの音楽を聴いていると、そんな気がしてならない。
レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは、ミクスチャーロックやハードロックの部類に入る。音楽としても大変完成度が高く、SOAD同様、歌詞の内容なんか無くたって、かっこよくて仕方ない。ボーカルザック・デ・ラ・ロッチャが放つ力強いライム。トム・モレロの独自改造されたスクラッチギターのファッキッシュなプレイ。しかし、彼らの音楽も社会への問題意識が根底に流れ、曲の重厚感を生んでいることを一体どれだけの聴衆が気づいているだろうか。人種差別による冤罪の囚人の釈放、権力による搾取、利権争いに巻き込まれる庶民、声なき声の民衆の叫びを歪むギターとともに叫ぶ。1つ1つを解読すると、たくさんの問題を内在した曲々であることに気付くはずだ。1番売れたゲリラレイディオもいいが、他の曲も素晴らしい。SOADとATRに並び、ウツノミヤに多大な影響を与えたバンドだ。
おすすめライブ・アルバム。MCや煽りが素晴らしい。熱くなる。

Live at the Grand Olympic Auditorium

Live at the Grand Olympic Auditorium




おまけ


忌野清志郎原発音頭。日本にも、こういう人がいる。若手でも、テレビに出てる時に思い切って、主張しちゃう人売れっ子が出てこないかな…。

MORALITY IS DEAD